龍使いの歌姫 ~神龍の章~
『ギャォォォォォン……………シャァァァァァ』

もう言葉すら話せない。激しい痛みと苦しみ、憎悪が渦巻く。

神龍はまるで、怒りに我を忘れた獣のように、空の上で暴れまわった。

『あまり近付き過ぎると、おいら達までやられそうだな』

「ここから矢を射るのは難しいだろ」

アルはレインに視線を移す。

「……確かに難しいかも知れない。でも、やるしかない」

レインは立ち上がって弓矢を構える。だが、足元が不安定なのと、神龍がぐねぐねと動きまわるので、狙いが定めにくい。

「………っ」

銀の矢は一本しかない。これを外せば、もう神龍をどうにかする術はない。

そう思うと、手が震える。

『……姉貴、危険だけどもう少し、神龍の側に行く。そしたら射れるか?』

「………お願い」

ゼイルの言葉に、レインは頷いた。やはりここからでは難しい。

『……了解だ!』

ゼイルは翼を動かし、高く舞い上がると、神龍の目の前へと移動する。

『ギャァァァァァン!!』

目の前に来たことに驚いたのか、神龍は口を開き、火を吹いた。

『うぉっ!』

「「!」」

ゼイルが避けると、上に乗っているレイン達もバランスを崩す。

「きゃー!」

ティアが放り出されそうになり、レインは慌ててティアの腕を掴んだ。

「大丈夫!大丈夫だよ!」

ティアの体を抱き寄せ、神龍を見る。

(………時間が無い)

レインは立ち上がり、再び矢を構えた。

その時―。

「きゃぁぁぁぁぁっ!」

ゼイルの頭のギリギリの所で立っていたレインは、神龍の、爪によって切り裂かれた。

結んでいた髪も、紐ごと切れて、肩から血が流れる。

「「レイン!!」」

『姉貴ー!』

レインはそのまま、下へと落ちる。
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