龍使いの歌姫 ~神龍の章~
道を探し続ける者達
レイン達が中庭へと降りると、レオンがやってきた。

「……終わったんだね」

レオンは悲しそうに微笑み、未だに泣いているレインを見た。

「ありがとう。……彼女を救ってくれて」

頭を下げたレオンを見ながら、アルは口を開く。

「……お前に聞きたい」

「何を?」

「お前は何者だ?幻惑の魔法使いという肩書きは分かったが、お前はすべてを知っているようだった。お前はただの人間では無いだろ」

初代龍王の話や、その前の歴史を見てきたような話し方をしていたと、アルはレオンに言った。

「僕は、一言も『人間』だとは言ってないよ?」

「………なら、貴方は誰?」

レインが尋ねると、レオンはクスッと小さく笑い、両腕を広げた。

その瞬間、レオンの姿は巨大な龍へと変わる。

白銀に輝く鱗を持ち、紫色の瞳で見下ろすその姿に、レインもアルも言葉を無くした。

『僕―いや、我は古代龍(こだいりゅう)。この世界が始まった時からここにいる。我は時と共に姿を変え、見守ってきた』

レオンはレイン達を見下ろすと、柔らかな口調で続ける。

『だが、我は本当ならば人間に肩入れしてはならない。何が起ころうとも、ただ見守っていなければいけなかった。だが……たった一人の少女を、愛してしまったことで、我は人間と関わる道を選んでしまった』

レインとアルは無言で先を促す。

『……我はリーザを……愛していた。だから、リーザの血を引く子供達を見守ってきた。城に仕えていたのも、リーザのためだ。……そして、我はレイン。そなたに出会った』

レオンは優しく目元を和らげる。

『そなたは、リーザにそっくりだった。見た目も心も。まるで、リーザが生まれ変わったかのように』

「……私が」

『でも、似ているだけで同じではないことを知っている。そなたはリーザではない。だが、我は勝手に、そなたをリーザと我の娘と思いこんだ。そなたに父と呼ばせたかったのも、我の勝手な我が儘だ』

レオンは自分に呆れたかのようにため息を吐いた。

『笑えるな。結ばれることなど叶わなかったという理由で、彼女の子孫を娘扱いなどと』

その言葉に、レインは弾かれたように顔を上げて、首を横に振った。

「そんなこと……そんなことありません!だって私、貴方を本当のお父さんのように思っていたんですから」
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