オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき


……もしかしたら。

思い当たるとしたら、昨日の一件。加賀谷さんは世話焼きだって話だし、友里ちゃんの身を案じた彼が、〝気を付けたほうがいい〟というようなことを言ったとしてもおかしくはない。

ふー、とひとつ息を吐いてから「お疲れ、友里ちゃん」と、いつも通りを意識して話しかけると、彼女は「お疲れさまです」とボソリと返した。

どうやら、怒っているわけではないらしい。
でもなにかが気まずいという雰囲気に、その理由を考える。

加賀谷さんからなにか注意を受けたとしても、友里ちゃんはどちらかといえば嬉しいだろう。
加賀谷さんに気にかけてもらえたことに喜び……そのあと、どう感じるんだろう。

〝恋人にはしてくれないくせに、お節介〟と苛立つのだろうか。
〝ただの同僚でいなくちゃいけないんだから、こんなことで喜んじゃダメだ〟と自分を律するのだろうか。

それとも〝松浦さん、余計なことして!〟と俺に怒るのか。

何パターンも考えてはみたものの、結局答えは出ず、さてどうしたもんかなと隣を歩く友里ちゃんを見たとき。
悲しそうにこちらを見上げている友里ちゃんと目が合った。

どうやら俺が見る前から見ていたらしい。

「どうかした?」

愛らしい目をわずかに歪めている友里ちゃんは、少し言いよどんだあとでそっと口を開く。

街灯の白い明かりが、彼女の白い肌をより際立てて見せていた。



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