オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
デメリットの可能性を何度も考え……そして出た答えに、自然と口角が上がっていた。
小学生の頃、新作のゲーム発売日に胸が躍ったけれど、まさにそれだった。
《おまえも加賀谷さんも抜けるから、女の子もシラケて結局すぐ解散。最悪だよ》
北岡に、一応昨日の件で謝罪のメッセージを入れると、すぐに返事が飛んできた。
ピコン、という小さな電子音と共に表示されたメッセージに、まだ会社なのかと聞くと、もう帰りの電車のなかだという。
まだ十九時前なのに、総務部は随分早く終わったらしい。
《いい感じだったのに。千春ちゃん……だっけ?》
《智夏ちゃんな。あの子も結局おまえ狙いだったみたい。おまえが帰ったら態度がすげー冷たくなったもん》
《それは申し訳ない》
ガッカリしている様子の北岡に謝る。
社員用のドアがロック解除される音がして顔を上げる。出てきた男性社員を見やってから、視線を手元のスマホに戻す。
暗いなか煌々と光る液晶画面が新しいメッセージを表示していた。
《いや、別に松浦のせいではないし。っていうか謝られると余計に虚しい》
語尾につけられたふざけた絵文字にふっと笑っていると、ドアのロック解除音が聞こえた。
もう何度となくからぶっているにも関わらず、彼女の姿を期待して視線を上げる。そして、ようやく見えたその姿に、スマホをコートの内ポケットにしまい、腰を上げた。
マフラーを口元まで上げた友里ちゃんは、俺を発見するなり眉を寄せ、目を逸らす。
その態度に、あれ?っと違和感を覚えた。
今まで歓迎されたことは一度もない。迷惑そうにされ、〝今日も好きじゃない〟と軽く振られるのがお決まりではあったけれど、今日のこれは少し違う気がした。