オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
「わかってるなら気を付けた方がいいよ。そういう部分に付け込もうとするヤツだっているから」
一泊空けたあと「まぁ、俺が言うのもおかしいけど」と付け足した松浦さんが、私の顔を覗きこんで笑顔を浮かべる。
「心の小ささを感じるきっかけになった理由とか聞くから、このあとご飯でも行かない? もちろん驕るから」
よく、こんなに機嫌の悪い人間を食事になんて誘えるな、といっそ感心してしまう。
会社を出てからここまでの数分、松浦さんは嫌な思いしかしていないのは明白だった。
だって、完全に八つ当たりした自覚がある。
なのに、話を切り上げるわけでもなく、逆に食事なんてどういう神経の図太さをしているんだろう。
感心を通り越して呆れていると、松浦さんは「それにさ」と口の端を上げる。
「その理由がもしも友里ちゃんの想い人に関係することなら、相談相手として俺は適任だと思うけど」
性格の悪さが覗く笑みで言われ、確かに……と納得してしまっていた。
この人の恋愛観は褒められたものじゃないし、それを自分でわかった上でそんなことを繰り返しているのも嫌いだ。
私が大事に大事に抱えている恋愛感情を、まるでリフティングでもするみたいにポンポンと弾ませてぞんざいに扱って遊んでいるのも気に入らない。
でも、私が今感じているムカムカを隠さず話せる相手といったら、工藤さんか松浦さんだけで……嫌われたってどうでもいい松浦さん相手なら、気兼ねなくすべて話せる。
……そうだ。松浦さんだって、ゲームのターゲットとして私をかまっているだけなら、私だって都合よく利用したって罰はあたらないのかもしれない。
「話のなかで、うっかり個人名が出てきてしまうかもしれないので、個室がいいです」
つっけんどんに言うと、松浦さんは意外そうな顔をしたあと、「了解」とにっこりと笑った。