オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
松浦さんが連れて行ってくれたのは、会社からふた駅の場所にある和風ダイニングだった。
抹茶色の長い暖簾をくぐった店内には、真っ直ぐに石畳み調の通路が延びていて、その両脇にはまるで茶室のような個室が並んでいた。
落ち着いた暖色の照明が照らす店内はしっとりとした雰囲気で、初めて入ったお店だけど居心地良く感じる。
通された個室は掘りごたつタイプの部屋で、黒い革の座布団が敷いてあった。
「奥どうぞ」と慣れた様子で私に奥の席を勧めた松浦さんは、チャコールグレイのコートを脱ぎ腰を下ろすと、ネクタイを緩めながら私を見た。
「友里ちゃん、上着脱ぐようならハンガーもうひとつ頼もうか? ここ、言えば持ってきてくれるから」
「いえ、大丈夫です。寒がりなので、ジャケット着ててちょうどいい感じなので」
私が着ているのは、白いブラウスに紺のジャケット、そしてベージュの膝丈スカート。グレイのコートは既に脱ぎ、ハンガーにかけている。
幅50センチほどの収納スペースには、松浦さんと私のコートでいっぱいいっぱいだけど、個室のひとつひとつにこういったスペースがあるのはとてもいいなぁと感心する。
木目が綺麗に浮かんでいるテーブルには、抹茶色のクロスが敷いてあり、二枚のメニューが置いてあった。
その一枚を手に取った松浦さんは「適当に頼んじゃうけど、友里ちゃん、苦手なものとかある?」と聞くから首を振る。