オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
「なんで? まだ友達になろうとしてるだけなのに」
「友達として信頼関係築いて、そこから結局は裏切るわけだろ。ただ単に一度寝ただけの男に振られるよりよっぽどキツいに決まってるじゃん」
ハッキリと言い切られ、返す言葉をなくす。
……そういうもんか?
自分だったらどうだろうと立場を置き換えて考えてみる。けれど、〝裏切られたら〟という仮定は俺のなかでは立てづらく、早々に諦め息をついた。
それでも、北岡の言うことをなんとなくは理解できた。
そうか。俺の行動は結果的にあの子を傷つけることになるのか。
今までだって散々、裏切って泣かせてきた自覚はあるのに、なんでだか友里ちゃんの泣き顔を思い浮かべると心臓のあたりに鋭い痛みのようなものが走り、自分の胸を見下ろす。
確かに痛みがあったのに、服の上からさすってみてもなんともない。
痙攣みたいなもんかと、さっさと片付け、暗い空にぽっかりと浮かぶ満月を眺めた。
小学五年生の頃、初めて告白された。
きつく断ったわけではないのに、あとから聞きつけた女子に囲まれ『ひどい』の大合唱。告白してきた本人は、まるで俺が悪いとばかりに泣きじゃくっていた。
『本気で好きだったのに』と言うけれど、相手が本気だったら断る権利はないってことなのか。からかって答えを誤魔化したわけでもないのに責められる意味はわからなかった。
向こうが気持ちを告白してきたから、俺も素直に気持ちを伝えただけなのに。結局、OK以外の返事をしたら責められるってことなんだろう。
その時に植え付けられた理不尽さはずっと後を引き、恋愛に関することが面倒になった。