オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
そんなことがあった三年後。中学二年のときに、あの時『ひどい』と先頭に立って責めていた子と同じクラスになった。
あれだけ眉を吊り上げて怒鳴っていたのだから、相当嫌われているんだろうなぁという俺の予想とは反して、その子は俺に好意的だった。
だから、ちょっと特別優しくしてみたらその子はすぐに真っ赤になって嬉しそうに笑った。
あれだけの嫌悪が好感へ。
感情なんて簡単に変わるものなんだと、しらけた頭のなかで考えていた。
今思えば、それを見たときに生まれた優越感が今の恋愛スタイルのスタートだった。
そもそも正解や順位のわからない恋愛を持て余してもいたから、だったら自分が気持ちよくなれるようなルールを設けたゲームにしてしまえばいいと思った。
それからだ。
俺が〝最低〟な恋愛ゲームを始めたのは。
「キツい……か」
「キツいだろ。っていうかおまえは、相手の子がどう感じようがどんだけ泣こうがどうでもいいんだろうけど」
〝どうでもいいってわけじゃ……〟と言おうとして止める。
北岡の言う通り、自分の優越感さえ得られればそれでよかった。これまでずっとそうだったし、そういう自分が今さら変わるとも思えないのに。
なんとなく、今まで騙してきた子と友里ちゃんを同じ位置に置く気になれないのは、下手に友達になろうなんてしてしまったせいだろうか。
手こずって、思いのほか時間がかかってしまっているせいかもしれない。
「でも、案外楽しいんだよなぁ」
思わず声に出した俺を、五センチほど下から北岡が見上げる。