不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 まゆこは笑みを浮かべてエルマを振り返る。

「バラ園に入って構わないかしら」

「はい。許可は得ています。素晴らしいですよ。……ん? テオ?」

 テオは、常にルースの近くにいる若くて小柄な侍従の名だ。

 まゆこは振り返って、エルマが視線を向けている方を見た。

 かなりのスピードで走ってくるテオは、みるみる近づいてまゆこの前に立つ。

 エルマが心なしかまゆこに近寄る。緊張しているようだ。

 はぁはぁと激しい息遣いを無理やり治めたテオは、深く腰を折る。

「失礼いたします。マユコ様。ルース様からのご伝言を言付かってまいりました。早急にということです」

「ありがとう。なにかしら」

「『今宵の晩餐は、急においでになったお客様がご一緒されますので、マユコ様はお部屋の方でとられた方が落ち着かれるでしょう』ということです」

 テオは、まゆこよりも十センチほど身長が低い。ルースに聞いたところによれば十八歳だというが、もっと幼い感じがする。

 二年ほど前、ルースが町へ出たとき、大道で行き倒れているところを拾ったのだそうだ。

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