不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 ――うぅ……苦手なタイプ。

 まゆこに対しては案外効果的かもしれない。すでに一歩下がってしまっていた。

 彼女の今日のドレスは、若草色が主体となった下地に、薄紅の桜の花の刺繍が施されている。小さな花たちは、腰に近くなるほど多くなって色を濃くしていた。

 ジリアンが用意してくれるものは、いつも大層な逸品だと思うが、大人っぽいというよりは可愛い形が多い。

 カーライルのドレスと対比すれば、あまりの趣向の違いに驚くほどだ。

 しかも、カーライルは髪を結っているのでとても大人っぽい。

 まゆこの髪は、両側が後ろへ回され、肩よりも下になったあたりからゆるく三つ編みにされた。後ろ髪はそのまま流されている。

 三つ編みの先には、大ぶりなリボンがつけられていた。

 リボンも若草色だったが、白いレースがフリルとなって両側に縫い付けられていて大層可愛らしい。

 朝の着替えのとき、己の姿を鏡で見たまゆこはさすがに頬を引き攣らせた。

『えぇ……っと。可愛いけど、似合わないでしょ。いくらなんでも』

『いいえ。お似合いです』

 確信口調で返事をくれたのは、侍女頭であり奥の責任者でもあるデイジーだ。

 デイシーは、パステルカラーはまゆこの色だと思っている節がある。しかも、可愛いドレスが一番だと考えているに違いない。

 ドレスに合わせるから、リボンもついてくるというわけだ。

 ジリアンに仕えることを命題にしているデイジーは、彼女を着飾らせることにも自分の生きざまを掛けているようだった。

 その迫力を前にすればなにも言えなくなる。結局、そのままになった。
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