不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 彼女はハンカチごと再び引き出しに仕舞うと、鍵だけ持って歩き出す。

 内廊下へ通じるドアを開けて寝室から出た。戻ってきたときに、潜んでいた誰かと顔を突き合わせたくないので、外から鍵を閉める。

 長い内廊下を書斎に向かって歩く。書斎の向こうからなら、誰にも見つからずに部屋から出られるかもしれないと思ったからだ。

 真夜中に近い時間でも、壁には明かりが灯っている。

 魔法はすごい。消費してゆく電気のようなものとして考えると、すぐに消したい気分になった。

 長々と続く左側の壁の向こうにあるのは、まず水周り、そして風呂だ。それの幅分を超えると衣裳部屋になるが、そこには、いま歩いている内廊下へ出るドアがあった。

 内廊下を挟んで向かい側には、通常の廊下へ出る扉がある。

これは侍女たちの出入り口になっているという。寝室のドアは鍵で閉められるから、誰かがこちらから忍び入ることはできない。

 どんどん行くと、突き当りのドアへ到着した。書斎へ通じるものだ。

 ドアを開けて書斎へ入る。まっすぐ進んだ奥の壁にもまたドアがある。

 中間にある右手側の大扉は廊下へ出る扉だというのは知っている。向こうの方の壁にあるドアがどこへ通じているのかは知らない。

 けれど、寝室からかなり離れているから、そのドアを越してしまえば、衛兵に見つからずに廊下に出られると考えた。
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