不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 泣いた夜から一昼夜過ぎての出発だった。いつも通りを心掛けて過ごしたが、気持ち的にはずいぶん落ち込んでいる。それが一気に上昇した。

 曇り空でも雲海の上は太陽光が溢れているだろう。

 さすがにそこまで昇らなかったので、王城を目指す公爵一行の馬車は曇り空を横切ってゆく。

 下から眺めると、さぞかし腰を抜かすと思うが、これがいつものことなら飛行機を見上げるくらいのものだろうか。

 窓が閉まっていても冷気を感じる。しかし、張り付いて眺めるのをやめられない。

 城がどんどん下方になり、平行飛行へ移ると、手を振ってくれるデイジーやベルトランの姿も見えなくなった。

 狭い中でも不思議なほど優雅に座るジリアンが、まゆこの方を向いて微笑する。

「午後には王城へ到着する」

「すごいのね。これもジリアンの魔法なの?」

「魔法陣を馬車に組み込んである。足先で土を叩く動作をスイッチにして飛行させるんだ。行先は、叩く回数で設定した」

「足先で……て、なにかの拍子にそういう動作をしたら、いきなり浮き上がってしまうのかしら」

「私の中に記憶されている魔法陣と、馬車の魔法陣が対になっている。足先で叩いた段階で、脳内で魔法陣を描いてゆかなくてはならない。よほどのことがない限り誤作動はないな」

 へーふーほー……と、ここでも感心する。
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