不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 ジリアンはまゆこを見つめる。まゆこは彼の視線を受けて見つめ返す。

 自覚する前に失くした恋だ。ジリアンの姿を目の奥に留めようと考えた。傍にいられるこの一瞬一瞬が、恐ろしく貴重だ。見つめ合う。

「あのー……。私もここにおりますよ」

 遠慮がちに声を掛けてきたのはルースだ。

「え? あ、もちろん、分かっているわよ」

 いまのいままで頭になかったというのは内緒だ。

「はは……。マユコ様、王城へ入る前にお伝えしなくてはいけませんが、あなた様はジリアン様のご婚約者となっておりますので、そのおつもりでいてください」

「婚約者……? どういうこと」

 ジリアンが答える。

「その方が、おまえの立場が強くなるからだ。バーンベルグ公爵の婚約者には、大抵の者が一歩引いてなにも言わないだろう。婚約者なら、私が常に傍にいても不自然ではない。……嫌だったか?」

 傍にという言葉だけでどきりとした。

 ――重症だなぁ……。
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