不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 ジリアンがものすごく怜悧なまなざしを向けてきた。

 迫力がすごくて、まゆこは思わず背を引いたが、背もたれに押されて動けない。

「ジリアン……?」

「いや、……マユコが気にすることはない。第一、言っただろう? ウィズにはいないと。召喚魔法は一度だけしか動かしていない。新たな者は誰も来ていないのだから、誰も――いないんだ」

「ウィズにいないというのも、時間が過ぎれば変わるかもしれないじゃない。世界は広くて、人も多い。あなたのセンサーに引っかからなかっただけかも」

 ジリアンは考える様子を見せた。まゆこは言い募る。

「たとえば……、そう、たとえばカーライルは、幼いときから傍にいたのでしょう? 妹みたいに思っていたから勘違いをした可能性もあるんじゃないの?」

「カーラ? 妹という感覚は少ない。三家が争うことは望ましくないから、邪険にできないだけで、カーラに関して勘違いはない」

「……そう。うがちすぎたことを言ったわ。ごめんなさい」

 語尾が小さくなった。目にも顕なカーライルの態度だったが、いまここで、彼女が言うべきことではなかった。

 いずれウィズからいなくなるというのに、カーライルのことを気にしている自分がとても嫌だ。

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