不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 腕を組んで横を歩くジリアンをちらりと見上げる。

 整った横顔は、噂話などそのあたりに浮遊している塵に等しいと言わんばかりに無視もいいところだ。表情はピクリとも動かない。

 独身の見目麗しい若い公爵であり、国王候補で財力も抜群。注目を浴びる要素が満載だから、噂が飛び交うのも無理はない。

 ――こういうことばかりじゃ、表情が薄くなっても仕方がないか……。

 表情一つでどんな騒ぎになるか知れたものではない。それこそ何気ない視線を向けるだけで結婚を迫られそうだ。

 可笑しくなってまゆこはくすりと笑う。

 視線を下げてまゆこの様子を窺ったジリアンも、口角をわずかに上げた。彼女が考えたことが分かったのだろうか。
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