不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「こちらです」

 侍従が大扉の前に立って開ける。

「迎賓の間ではないのか」

「申し訳ありません。陛下のご体調がすぐれませんのでこちらでお願いします」

 こちらというのは、国王の個人的な居室で、どうやら寝室らしい。

「バーンベルグ公爵様でありましても、ご謁見はご遠慮願うほどでございますが、陛下が是非ともご婚約者様に逢いたいと仰せられました」

 奥まったところの天蓋付ベッドの周囲には、お付きの者たちや、どう見ても医師だと思われる者たちが立っていた。

 ジリアンが近づくと一斉に頭を下げる。

 本来なら迎賓の間で交わされる挨拶を、横になっている国王のベッド脇で行なう。

 年老いて体調が悪いと聞いていた国王は、情報通りに起き上がれない様子だ。

 ルースから聞いたときに、ジリアンと交わした会話を思い出す。

『次の国王が決まったら、国王陛下はどうされるの? 奥隠居?』

 次が決まれば早々に王位は継承されるという。

『現王はフォンダン家の出だ。王妃殿下もすでに逝去されているから、子供たちが育っているフォンダン家へ戻られるのではないか。王城とは別に宮殿が用意されているが、どちらへ行かれるかは、ご本人の望みに沿うことになる』

『子供たち……カーライル?』

『いや、カーラや兄のダレルは、陛下の従妹の子になる。陛下の子供はフォンダンの本家ではなく縁戚にいるらしい。王妃殿下の影響が強く出て、魔法力がさほどではなかったからな』

 魔法力は遺伝するが、顕性遺伝ではないようだ。

 子供がいると聞いてかなりほっとした。フォンダン一族は親類縁者が多い。
< 196 / 360 >

この作品をシェア

pagetop