不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 普通なら迎賓の間で述べるべき口上を、ジリアンはベッド横で口にする。彼は深く頭を下げて国王への忠誠と敬意を表した。

 まゆこもジリアンに倣って一緒に礼をする。両手で裳裾を摘んだ正式な礼だ。ふらつかずにできるようになったのは、デイジーの特訓の成果だった。

 国王は掠れた声でジリアンに告げる。

「全力を尽くせ。王にならなかった場合は、新たな王に忠誠を捧げてほしい」

「はい。お言葉通りに致します」

 老いている国王は、まゆこに向かって細い手を上げた。

 まゆこはジリアンと場所を入れ替わり、その手を両手で握る。

 ピリ……と、電流に似た微かな刺激が体の中を走った。一瞬であり、微量なものなので、そのままやり過ごす。

 軽く頭を下げてから、練習していた挨拶の口上を口にする。

「お逢いできましたこと、まことに光栄に存じます」

 とても形式的なものだったが、心を込めたつもりだ。
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