不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 まゆことジリアンは、まず公爵夫人の寝室へ入った。

 そこは書斎とリビング兼用であり、ソファセットから巨大な書棚に書斎机が備え付けられている。窓も大きいがベランダはない。

「お飲み物をお持ちします」

 きっちりと頭を下げたのは、バーンベルグ城からついてきていたジリアン付きの侍従頭だ。

 デイジーは来ていない。家令のベルトランと一緒に留守番になる。代わりにエルマが、今回の王城滞在における侍女たちの統括を申し付けられていた。

 運び入れた荷物の片づけを指示しているのを見て、まゆこの口元には笑みが浮かんで仕方がない。

 ソファに落ち着く前に、まゆこは壁にある簡素なドアを開けてみた。廊下へ出る大扉とは別なドアだ。

 隣はジリアン用の、つまりは公爵のための寝室になっていた。

 バーンベルグ城では夫妻の寝室は内廊下で結ばれていたが、王城では公爵位に合わせてあり、ドア一つを隔てた隣同士のようだ。
< 200 / 360 >

この作品をシェア

pagetop