不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「では、行こうか」

「……はい」

 立ち上がったジリアンに、侍従が黒い革のコートを持ってくる。まゆこには、エルマが白いふわふわの毛皮のコートを持ってきた。

「え、これ?」

「はい。どうぞ」

 ドレス用コートなので踝まである。襟も高く、風の入る隙間などない。帽子も筒型の白で、白い手袋も渡される。そしてマフだ。

「重装備なのね」

「夕方から急激に気温が下がるそうですので」

「これは可愛い。ですよね、ジリアン様」

 ルースに振られたジリアンは黙って頷いた。

 彼の革コートには、首の周りに肩まで隠れるようなフォックスの毛皮があって、なかなか野性味あふれる姿になっていた。

 まゆこは頬が赤くなるのを止められない。なにをやっているのかと自分に呆れて、早足で歩き始める。

 無言でついてくるのはジリアンだ。その後ろからルースが来る。

「行ってらっしゃいませ」

 エルマをはじめとした侍女や、テオたち侍従の見送りを受けて外へ出た。
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