不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「ジリアン。断言していいの? 本物が出てきたら、あなたが困るでしょう?」

「……私のことは考えなくてもいい。はっきり言っておいた方が、面倒が少なくなる。おまえもだが、私自身も助かっているんだ。今回の王城入りで、貴族令嬢との個人対面がどれほど減ったか。ありがたい話だ」

 個人対面、つまりは見合いだ。

 娘をジリアンに娶せたい貴族が引きも切らないのは知っている。

 彼は、突然廃嫡される可能性を持つ嫡男ではなく、すでに公爵だ。嫁ぎ先としての安定感は抜群だろう。

 まゆこにそういうことを教えたがる夫人も多いので、情報はいくらでも耳に入った。

 婚約者がいても奪い取れ――と考える貴族がほとんどのようだ。王宮社交界はまさに権力が柱となる無法社会だった。

 だれもかれもが見目麗しく押しも強く主張もはっきりしている。まゆこは自分がいかに場違いなのかを痛感しながらも踏ん張った。
< 230 / 360 >

この作品をシェア

pagetop