不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 胸が苦しい。本当にジリアンは大丈夫なのだろうか。規則というものは、守る意思がなければ意味はない。

「着替えるには早い時間だけど始めたい。なにかしていないと落ち着かないのよ」

「そう致しましょう。雪が多くなる前に移動して、闘技場にあるバーンベルグ家の待合室にいることもできます」

 雪が降る中での観戦になることを思えば、暖かな格好になる。

 目立たないようにするのと同時に、国の威信を示すために華美を推奨するというのが、執務機関たる王城からの要請だ。

「こちらを」

 侍女たちが運んできたのは、上着とスカートといった分離式のドレスだった。完全な長袖になっている。

 そして、濃い茶のフード付きコートが持って来られた。

 深緑の厚い生地で作られた襟の高い上着には、首のところと袖先、腰回りに来る裾に小さく寄せられたフリルと白いレースがあった。

 スカートは、王城内で着ていたドレスの裳裾ほど広がらない型で、上着と同じ深緑をしている。一瞬、ラボへ行くときに着ていたスーツを思い起こした。

 下スカートは厚手の生地で用意されている。フリルがたくさんあったので、何枚も重ねた感じになった。これなら十分暖かだ。

 全体的にすっぽりした型なので、動きやすい。

 靴下も厚手のものが用意されていた。編み上げ式の短ブーツがあったのには少し驚く。町へ行くのだと改めて思う。
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