不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「ありがとう、ジリアン」

 彼はそっと微笑んだ。滅多に笑わないと思っていたジリアンは、このごろは頻繁に綺麗な笑みを向けてくれる。

 彼女に対してだけではないかもしれないが、それが嬉しいということもいつか伝えたい。

 暖炉の火が暖かだった。ゆらゆらと燃える焔は魔法で燃えているのに、揺れ方は本物と同じに見える。

 二人でなにも言わずに焔を見つめる。ジリアンが囁いた。

「こうしている時間がどれほど大切なものであるのか、失くす前でさえこれほど感じるのに、失くしてしまったら耐えられないほど身に染みるだろうな」

「いつかきっと現れるわ、あなたの大切な人。そうすれば、もっと大切な時間が巡って来るわよ、きっと」

 これだけ言うのがやっとだった。
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