不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「さて。時間だ」

 ジリアンがすっと立ち上がって、ソファの背に掛けていた上着を着る。まゆこも急いでソファから立つ。彼について動き出そうとしたのを止められた。

「ルースたちに伝えるから、迎えが来るまでここで待っていろ。この部屋には、私が結界の魔法陣が敷いたから安全だが、外へ出ると流れの魔法士がおまえになにかするかもしれない。王城での安全は、町の中ではないと思ってくれ」

「はい」

「行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 それしか言えない。軽く頭を下げて、彼の背を見送る。

 ドアが開く。ジリアンが廊下へ出る。彼の背の向こうに突然、赤い影が出現してジリアンにとびかかった。カーライルだ。彼にキスしようとした。

 まゆこが驚愕の目で見ているわずかな間のことだ。

 いきなりでも、ジリアンは右手を上げてカーライルの唇を避けた。

 ただ、赤い唇が彼の手の平に触れたのを見た。

 ドアが閉まる。まゆこが見たのはほんの一瞬の間の出来事だった。
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