不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 愛情を持っても相手から同じように返されるとは限らない。過去の公爵の中には、無理やり妻にして生涯閉じ込めた者もいた。

 同じ轍を踏む気はない。まゆこの涙など見たくはなかった。

 制限されていた魔法力が解放されてゆくのを感じる。

 思い出す。かつての自分を。

 ジリアン・バーンベルグが物心ついたときには、親は逝去したあとで、親族と呼べる者は父親の弟になる叔父だけしかいなかった。

 叔父は彼をバーンベルグ家の最後の一人になるかもしれないと言った。

 可愛がってくれたと思うが、叔父はいつも絶望的なまなざしでジリアンの母の肖像画を見ていた。

 やがて自ら命を絶って、親族と呼べる者は誰もいなくなった。

 バーンベルグ家の呪いについて、まだ子供だったジリアンに事細かに話したのは、もしかしたら兄に対するやりきれない気持ちの表れだったのかもしれない。

 母は父を選んでいたから。
< 266 / 360 >

この作品をシェア

pagetop