不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「障壁の修復って、具体的にどうするの。北側の国境線に障壁が張られているなら、かなりの距離でしょ。一人で、できるものなの?」

 観客席に残る者たちも大勢いてかなりの喧騒があるというのに、ルースが押し黙ると、バーンベルグ家の特別席内はしんと静まった。

 降っている雪がベールの替わりになっているようだ。

 ……なにかおかしなことを聞いたのかしら。

 まゆこが不安になるころ、ルースはふっと息を吐いた。

「はるかな昔、魔物軍団と大戦がありました。そのときの魔法士たちが命をなげうって障壁を築いたのです。その基軸となるのは、大地との『契約の門』ですね。門の鍵を王が掛け直せば、障壁は自動的に修復されます」

「門に鍵?」

「魔法言語の詠唱をして門の魔法陣を発動させるのです。掌が鍵です。王の掌と門の錠はそこで繋がりますから、王が年老いたり病をわずらったりして力が衰えると、錠が緩んで障壁に穴が空くというわけです」

 聞いてすぐに理解できるような内容ではなかったが、以前ジリアンに言われたように、概要を掴むのを優先する。
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