不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 ジリアンが舌打ちをする。

「くそぅっ」

 木々で彼女の姿が見えなくなってゆく。ジリアンは門へ向いた。

 できる限り早く鍵を――。そうすることがまゆこを守ることにもつながるのは明白だった。

 襲ってくる魔物を一旦すべて倒しても、すぐさま穴から供給されてくる。しかも限りなく。

 穴を塞がない限り、延々と防御の戦いをするしかない。疲れ果てた時点で終わる。

 彼は王となる者だった。思考は高速で回り、するべきことの順番を狂わすことはない。穴を塞ぐ。そのために、緩んでいた門の錠を掛け直すのを最優先にする。

 鍵のところには魔法陣がある。ジリアンはそこに己の手を当てて詠唱を始めた。

 大きな魔法だから、短い魔法言語では動かない。

「《古の契約を新たにする。約束の王が、ここに立ち、門と繋がる。王はウィズを守るために来た。応えよ、そして守りの壁を立て直せ……》」

 長い詠唱が続く。
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