不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 まゆこはジリアンが門に手を当てるのを見た。固い樫の木が何本も幹を密着させて彼と鍵穴の位置を囲う。見えなくなった。

「はぁ、はぁ……」

 雪の中に突いた膝が、新たに降ってくる雪で次第に埋もれてゆく。肩で息をしながら片手で胸を押さえた。

 ――だめ、持ちこたえなくては。だってここでわたしが倒れたら、ジリアンは完了できなくなってしまう。

 まゆこを守ると言った彼だから、危ないところは見せてはならない。

 彼自身のすべきことを優先できるように、いま願うのだ。

 ――好きだから。命まで掛けてしまうくらい好き。ジリアン。
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