不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 壁の向こう側にいた魔物が放れてゆく。ヒイラギに白い花が咲き、散って実をつけ振り撒きながら、木はどんどん大きくなる。雪の降る中で、再び花が咲いた。

 何百年も生きるヒイラギがある。葉は丸くなりやがて朽ちてゆくのだ。

「ありがと……。そうよね。無理なお願いをしているんだもの。わたし自身が削られるのは、当たり前なんだ……」

「マユコ様、マユコ様……あぁあ……」

 雪の上に伏せてしまったまゆこの両肩をエルマが揺さぶる。

 穴が塞がり新たな魔物は入ってこられない。ルースはその場にいた魔物を消滅させるのに必死だ。

 わずかに漏れ聞こえていた詠唱が、辺りに響き渡るほどの大音響となった。

 最後の結びが、この地を覆う。

「《わが名はジリアン・バーンベルグ。門よ、この名を刻め》」

 鍵がかけ直され、新たな錠が下りた。

 障壁が光る。魔法力が行き渡ってゆくのが目に見えた。
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