不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 大学では合コンなどにも参加したが、男性との会話が上手くできないと自覚しただけで終わった。

 気が付けば、友達はみな彼氏持ちで彼女は取り残されていた。二十三になっても、大人の恋に指先一本も触れたことのない状態ではさすがに考えてしまう。

 上手くいきそうになっても、一歩引いてのお付き合い感覚では、相手はじれったくてたまらなかっただろう。

 もっと踏み込んで相手を知り、彼女のことも知ってもらいたいという気持ちがあるのに、一歩が出ないまま終わっている。

 しかしいまは、付き合う付き合わないという話ではない。踏み込むよりも、ここは聞かなかったふりだ。

 同僚と話すほどにはタメ口でもいいと言われたが、身分の違いが厳然とある世界でそれはまずいだろうと考える。

「ジリアンは公爵様でしょう? 周りにいる人たちが変に思うんじゃないの?」

「マユコは私の大切な客だと皆には言い渡してある。好きなように話しかけてくれ。おまえは私が召喚した。おまえの意志を確かめずにな。こちらの勝手でしたことだ。大きな顔をしていればいい」

 彼女が思っている以上に、ジリアンは『勝手でしたこと』を認識していた。

「この城の中では、という限定つきだがな。私相手に気遣いは無用だ」

「限定つき……。この城の外では気をつけろということね?」

「そうだ。この城を出ることがあれば、いろいろと要注意になる。もちろん、そのときには私が何としてでもおまえを守るから心配はいらないが」

 頬に熱が上がってくる。

 真正面から『おまえを守る』などと言われたことがあっただろうか。否、ない。
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