不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「ジリアンが単体ですごいってことなのね。指先と言葉だけで使えるんだもの。準備や道具や、それに長い呪文もいらないんだ」

「いまの魔法の場合は、対象になる〈声〉と〈空気〉と〈遮断〉の認識を深めることと、魔法陣を実際に手で描いて魔法言語の細かな詠唱が必要になる」

「え? 一言だったしょう?」

「発動言語は短く設定することができる。魔法陣を完成させてから、発動言語の詠唱部分を短くしていって、身体の内側に刻んでおくんだ。魔法陣は短時間で引っ張り出さないと役に立たないから、発動言語は限りなく短く設定する」

「……つまり、自分で動かせる魔法陣を身体の中に描き留めておいて、たった一言で発動できるようにしてあるってことなのね」

 ジリアンと目が合う。

「敏いな、マユコ。簡単な説明をしただけなのに、本質を掴んでくる」

「そうかな。分かり易かったよ。設定した人以外がその言葉を使っても、魔法は発動しないのね。必要なのは内側に刻んだ魔法陣だもの」

「その通りだ。限りなく短い言葉で、できる限り大きな魔法を使えるように、魔法士は己の力を磨く訓練を欠かさない」

 高い地位だろうに、訓練をしているのか。

 まゆこは彼をまじまじと見つめた。

 研究者の端くれだから、つい観察者の目になる。そして思う。

 ――一度動き出したら誰にも止められない感じ。この人、きっと怖い人だ。
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