不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 いまここで尋ねるのかどうするか迷っていると、不意に扉がノックされた。

 ぎくりとして斜め後ろになる大扉を振り返って見た。

 ジリアンが誰何すると、扉の外でルースが返事をする。

「他の者も連れてまいりました」

「いいぞ、入れ」

 入室してきたのは、ルースと年配の男性、そして恰幅のいい侍女だ。

 侍女は、まゆこの母親と同じような年齢に見える。お仕着せが他の者たちとは少し違っていたが、侍女だろうと予想をつけられるほどには同じ型をしている。

 ルースが侍女の方を見やりながら言う。

「こちらが公爵夫人付きの侍女頭、デイジー・アボットです。奥向きを取り仕切る最上位は奥方様ですが、まだいらっしゃいませんので、デイジーが統括しています。今後は、マユコ様に付く侍女たちのまとめ役もすることになりました」

 デイジーはゆっくり頭を下げた。

 座ったままとはいえ、まゆこも同じように返そうとしたところで、頭を起こしたデイジーが制止した。

「マユコ様。わたしに頭を下げる必要はありません。他の侍女たちにもです。上下関係は、はっきりしていただきませんと、皆に示しがつきません。心置きください」

「……はい」

 物言いは静かなものだったが、ぐっと押してくるような迫力がある。

< 82 / 360 >

この作品をシェア

pagetop