不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 これで顔合わせは終わり、ジリアンは彼らを下がらせた。

 二人きりになると、彼はまゆこに三つの頼みがあると言った。

「なに?」

「私が召喚魔法を発動してマユコを異世界から呼んだ――ということは、誰にも漏らさないでくれ。秘密だ。あの場にいて手伝った魔法士たちは、契約金を支払ってすでにこの国を出ているから、城の中では彼ら三人しか知らない」

「分かったわ」

「二つ目は、おまえの出自についてだ。誰かに名前を聞かれたら、マユコ・リンガルと名乗ってほしい」

「リンガル? ルースと同じにするのね」

「そうだ。子爵家の関係に入るということにしたい」

「詳しく聞かれたらなにも答えられないけど、それでもいいの?」

「構わない。貴族社会では、端の方の血筋など誰も調べないからな。調べられて困るのは、マユコが異世界から召喚されたということだ。異世界からの召喚魔法を成功させた者は、恐らく誰もいない」

 ジリアンは成功した。これだけでも彼の力が他と一線を画すると分かる。

 三割程度の発動でもそれほど強力なら、全魔法力を発揮するとき、どれほどのものになるのだろうか。

 ――やっぱり、怖い人だ。

 彼に破壊衝動がないのを祈りたい。
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