不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 矍鑠と動いて頭を下げたリンガル子爵が穏やかに言う。

「マユコ様はジリアン様の大切なお客様です。ご不自由がありましたら、何なりとお申し付けください」

「よろしくお願いします」

 礼を尽くされれば、軽くであっても頭を下げたくなってむずむずした。

「ルースは、幼いころから一緒に育った。幼馴染の友人であり、秘書的な役割も果たしている。魔法力も持っているぞ」

「あ、だからホールで白い上着を羽織っていたのね。儀式用なのでしょう?」

 ルースが顔をほころばせて明るく答える。

「そうです。私の魔法力は本当に微弱なので、たいした役には立ちませんが」

「ルースは魔法力など必要としないくらいに有能だ。バーンベルグ家の間諜たちをまとめる頭でもある」

 ジリアンが補足した。

 二人の関係性がいまいち分からなかったが、ここでようやく合点がいった。

 ジリアンの友人であり直属の部下ということだ。ルースは、にこにこ笑っていても、案外曲者なのかもしれない。

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