不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 まゆこが窓から落ちたとき、必死の形相で走ってくるジリアンの姿が目の奥に焼き付いている。表情は薄く、なにごとにも動じない冷たさを感じていたのに、あのときばかりは別人のようだった。

「別人っていうより、あれが本来の姿かもしれない……」

 慣れていないような笑みにもすごく惹かれる。鼓動を速めるほどに。

「……吊り橋効果みたいなものじゃない? ジリアンがいないと帰れなくなるから、だからドキドキもするんだわ。きっとそうよ」

 声に出して呟いたら、気持ちも鼓動も落ち着いてきた。

 お腹が空いていることを再度自覚したので、まゆこはドレスの裳裾を抱えるようにして立ち上がり、そそくさとソファのところへ移動する。

 フォークとナイフを手に取って、まずは野菜から食べ始めた。パンもある。デザートらしきお菓子もあるのが嬉しい。ジュースもあるし、お茶もあった。
< 93 / 360 >

この作品をシェア

pagetop