秘書課恋愛白書
このままでは埒があかないと思ってとりあえず返事はせずに小さく頷いてみせた。
じゃないとこのまま離してはもらえそうになかった。
涙を拭いて鼻水を啜り、なんて姿だろう。
お酒が入っているせいで心臓もバクバクと跳ね続ける。
「綾女、どこのホテル泊まってる?送ってく」
そう言って私の手を握るとそのまま歩き始める。
されるがままに私は腕を引かれてユウの後に続いた。
なんかもう、考えることに疲れたかも。
歩いてちょっとした駐車場にユウの車は停まっていて、助手席へと押し込められた。
国産車のセダン、異様な空気を醸し出しユウの好きだった歌手の歌が流れ続ける車内。
ユウの話に耳を話を傾けて時々返事をする。
ただ、視線はそちらに向けることなく外の真っ暗な景色を眺めていた。
就職先は大学時代に話していた商社。
2年目に入ってすぐに辞令で海外へ赴任して5年目となる今年に入って日本へと帰国。
今は東京の本社で海外の経験をもとに仕事を始めたらしい。
私の知らない空白の5年間を埋めるようにユウは自分の身の内を話す。
聞いてないフリをしつつも聞いてしまう自分がそこにはいた。