秘書課恋愛白書
ゆきちゃんと一緒に人だかりへと近づくと、そこには一枚の紙切れが掲示板に貼ってあった。
背伸びをしながらなんとか掲示板の文章を読み上げた。
『辞令 第1秘書課 中原 綾女。
本日付で宮野ホールディングス秘書課(社長付き)に出向を命ずる』
………………え?
「え。嘘……」
「先輩、凄い!ついにトップクラスじゃないですか!」
興奮したようにそう話すゆきちゃんの声があまり入ってこない。
確かにトップクラスの企業へと出向かもしれないけど…
待って、この会社ってまさか。
そんな考えを巡らせて突っ立っていると後ろからバタバタと慌ただしく廊下を走る音がしてそれはどんどんこちらへと近づいてくる。
「中原!探してたんだ…いやー…お前の栄転には驚かされた」
「部長…これは一体」
ハァハァと息を切らしてその場に崩れ落ちる部長。
あーあーそんな体で無理して走るから…
「見ての通り、役員会でついさっき決定したんだ」
「でも!待ってください。宮野ホールディングスって…そのまさかですよね」
「そのまさかだ。うちの経営母体だよ」