秘書課恋愛白書
「…怜と、何かありましたか?」
「何かあったというか…私が勝手に舞い上がって、勘違いしてたといいますか…」
「…話せる範囲でいいですので僕に話して見ませんか?」
灰田さんは眼鏡のフレームを指で持ち上げて掛け直す。
眼鏡の奥の瞳が私を優しく見つめていた。
またじんわりと目頭が熱くなり俯くと涙が溢れてくる。
私はゆっくりとさっき見たことと、今まであったことを灰田さんに話すのであった。
「……っということなんです」
「あんの……馬鹿」
はぁー、と頭を抑えながら深いため息を溢す灰田さん。
穏やかで暴言を吐くイメージが全くなかった灰田さんがボソッと呟いた。
「好きになってはいけない相手なのに、私が社長を好きになってしまったバチが当たったのかなって…」
「それは違います。僕は今の話を聞いてとても嬉しいんです。怜を好きになってくれた中原さんにとても感謝してるんですよ?」
「私のこと買い被りすぎですよ」
「中原さん…」
眉毛をハの字に下げて申し訳なさそうにする灰田さんに逆に恐縮してしまう。
悪いのは灰田さんじゃないのに。
「でも私、ハッキリと見たわけじゃないので何とも言えないんですが…」
「だとしてもそんな勘違いをさせるあの馬鹿が悪い」