秘書課恋愛白書


***



灰田さんの秘書の女性がいい香りのするハーブティーを淹れてくれた。

どうぞ、と差し出されそれを受け取ると秘書の女性は灰田さんに深く頭を下げると部屋を出て行った。


「どうぞ。これ僕のイチオシなんですよ」

「ありがとうございます…」


テーブルを挟んで向かいに座る灰田さんはニコニコしながら私にハーブティーを飲むよう促す。

有り難くいただこうとティーカップに口をつけた。

…美味しい。


「美味しいです」

「良かった。だいぶ落ち着いてきましたね」


連れてこられたのは灰田さんの会社。

社長のご友人とあって、しかも名家出身という灰田さんの会社も宮野ホールディングスに負けないくらいやっぱり大きくて圧倒された。


「灰田さんは…社長に用事があって会社前にいたんですよね?なのに私のせいですみません」

「大した用事じゃなかったんで気にしないでください。それよりも中原さんのが心配でしたからね」


それに怜ところなんでいつでも行けますよ、と笑ってみせた。

でも迷惑かけたことには変わりない。

社会人5年目にもなって、こんなことで会社を飛び出すことになるとは思わなかった。
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