秘書課恋愛白書

「急だけど、来週の火曜日から1泊2日で出張が決まった」

「どちらへですか?」

「今回は京都。ホテル事業を展開してるグループ傘下が来週完成するホテルの視察に来て欲しいっていうから予定に入れておいて」

「かしこまりました」


ふむふむと頷きながら社長用に用意した真新しい手帳に予定を記入していく。


「あ、勘違いしないでよ。もちろんキミも一緒だからね?」

「かしこまりました。………え?」



一瞬自分の耳を疑い、手帳に書き込む手が止まる。

パッと顔を上げると社長はニヤニヤと笑みを浮かべていた。

なんで私まで?!という表情をして見せたら、社長が眉を顰めた。



「僕の秘書なんだから当たり前でしょ。これは社長命令。わかった?」

「……わかり、まし、た」


仕事だから仕方ないと渋々了承して予定を付け加えた。

"社長"の出張についていくのは2回目。

でも前の社長は女性だったし、女同士楽しい出張だったけど…この人と一緒に出張は正直先が思いやられる。


「いいじゃん。仕事でいくからタダで新しいホテルを堪能できるんだよ?」


一緒に行くのが貴方だから不安なんです、なんて本人を目の前にして口が裂けても言えない。



「出張でキミの技量が図れるね。楽しみだよ」

「ははっ…」


最早乾いた笑いしか出てこなかった。

火曜日なんて……こなきゃいいのに。
< 42 / 320 >

この作品をシェア

pagetop