秘書課恋愛白書
「こら、レイちゃん。女の子困らせないの。それともアヤメちゃんのこと気に入ったの?」
「別に?名刺くらい減るもんじゃないしよくない?」
一枚減るわよ。
それに今日いきなり会ったばっかりの人に自分の素性を晒すのはいかがなものかと。
警戒心むき出しでどうするか迷っていると、彼は私の隣の席へと移って来た。
「悪用したりしないからさ?」
「そう言う問題じゃなくて、会ったばっかりの人にあげるのはちょっと…」
それにあなた、仕事してるようには見えないんですよね。
なんて喉まで出かかったのをぐっと堪える。
ブロンドから覗く小さく光るピアス。
白いワイシャツに開いた首元。
手首には仕事柄わかってしまう高級メーカーの腕時計。
細身の黒いパンツ。
…休みの日のホストみたいな格好。
「…いま、ホストみたいって思った?」
「?!!」
心の声がまたしても漏れてしまったか。
慌てて口元を覆ったが時すでに遅し。
「ははっ、アヤメちゃんがそう思うくらい目立つ髪色と瞳だよね。おまけに女の子顔負けの綺麗な顔だからそう思うのは無理もないよ。でも安心して?レイちゃんこれでもちゃんと企業人だから」