未完成のユメミヅキ
帰宅して夕飯を食べてから、亜弥に電話をした。
『なにそれ。ただ連れて来いってこと?』
「うん。亜弥もだからね」
『そんな楽しそうなこと、呼ばれなくても行くわ。問題は天田和泉ね』
タロちゃんも亜弥も、なんでそんな得体の知れない企みに対して、楽しそうだなんて思うのだろうか。わたしには気が知れない。
「ただ誘っても、場所が体育館だとまたバスケかよって言われそう。絶対に来ないじゃん」
バスケはもう辞めたのだと繰り返す彼を、体育館という場所に誘い出すのは難しいのだ。
「先生もタロちゃんも分かっているくせにさぁ」
『でも、わたしたちの中でいちばん和泉くんが言うこと聞くのって、まふだと思うんだけど』
「その出所不明な信頼は重荷」
『ごめん、ごめん。で、どうやって誘い出すかなんだけれど』
「それ。亜弥ちゃんの頭脳をお借りしたい」
『二段階でおびき寄せるのがいい気がする』
二段階とは。頭のいいひとの考えにはついていけない。電話口から、うーんと唸り声が聞こえる。わたしも同じく唸った。
『わたしが、まふが呼んでいるって誘うから、それから体育館に連れて行ったら?』
「そんな回りくどいことして来るかな」
『第一段階にわたしなら、バスケのことだと考えないと思う』
「それもそうかなぁ」
『さらりと言ってくるから。任せて』
亜弥はこういうところ、凄く頼もしい。
「用事あるって帰らなきゃいいなぁ」
そこは賭けだな。
とにかく明日、なんとしても和泉くんと体育館に連れ出さなければ。亜弥がいてくれて助かった。
「じゃあ、明日よろしくお願いします」
まるで業務連絡のような会話になってしまったけれど、亜弥との電話を切った。
なんだか深刻に考えているのは自分だけが気がしてきた。盛大にため息をついて、ベッドに仰向けになった。