未完成のユメミヅキ

「よっしゃ、いくぞ!」

 オーとかイエスとか叫び、選手たちはステージに飛び出していった。

 わっと声援があがり、悲鳴まで聞こえる。

 続いて行くわけにいかないので、わたしは舞台袖からバスケ部員たちがいるアリーナに飛び出す。

「体育館に仙台sparrowsの選手が来てるって!」

 誰かが叫んだ。

 体育館の、あちこちの入口から生徒が走り込んでくる。4人の選手はステージから飛び降りて、生徒たちに駆け寄り、ハイタッチや握手をしていた。

「わーい、まふ! 凄いね。仙スパのサプライズ訪問じゃん!」

 亜弥がわたしを見つけて駆け寄ってきた。

「なにこれ。大騒ぎじゃないの」

「わ、見てあれ!」

 亜弥が指さした方向。そこへ入ってきたのがテレビカメラだった。地元テレビ局。こんなものまで来ているなんて驚きだった。

「知らなかったの、うちの生徒だけなんだね」

 いまや、体育館には大勢の生徒が集まっていた。ちょっとしたパニック状態である。制服やジャージ姿の生徒たち。男子も女子もいる。

 顔はなんとなく見たことはあっても、あまり詳しくないから名前までは分からない。喜んでいる生徒はこの選手たちを知っているのだろう。バスケ部員じゃなくても、飛び跳ねて喜んでいる生徒もいる。

「みなさん、こんにちは! 仙台sparrowsから来ました。日下です」

「こんにちわー!」

「今日はサプライズということなんですが、バスケ部員のみんなとちょっと遊ぼうかなって思って来ました」

「チアーズは連れて来られなかったけれど、男子ごめんね!」

 生徒から笑い声があがった。

 短髪で笑顔が印象的な日下選手がマイクを回し、ほかの選手が自己紹介をした。背が凄く高い島田選手、顎髭がある木村選手、茶髪の浜田選手。ワーワーと声があがって、興奮状態である。

 小谷先生が混ざるとなんだかひとつのチームみたいだ。そして4選手は「小谷さん」と呼んでいた。こういう場面、テレビで見たことがある。

「じゃあ、男子バスケ集まって! ミニゲームするから」

「先輩たちと女子はまたあとで。順番な」

「じゃあ、1年でチーム作るぞ!」

 選手たちと小谷先生があれこれ声をかけると部員たちはモタモタせずに準備をしている。さすが運動部だなと思う。

 小谷先生が仕切ると、わらわらとジャージの男バス部員が集まってくる。その中に、タロちゃんに引っ張られて和泉くんがいる。


        
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