一匹狼くん、拾いました。
俺は制服のズボンを穿いた後、着ていたパーカーの上にブレザーを羽織り、学校に向かった。
「はぁー」
2年2組の教室のドアの前で、軽くため息を吐く。
担任がご丁寧にも始業式の日に俺の家に留守電を入れてくれてたから、2組だってことは間違いない。
今の時刻は14時すぎだ。
大方5時間目の途中だろう。
ドアの上の方にあった丸いガラスから覗くと、仁は俺の視界の前方にいた。
どうやら、仁がいるのは教室の真ん中の列の一番後ろらしい。
頭に浮かんできたのは、去年、教室で一緒に過ごしていた時の楓と岳人の光景だった。
ドアを開ける勇気が俺にはなかった。
匂いがする。
木で作られたドアと、窓から見える木目模様の床が醸す匂いに混じって、血の匂いがしてくる。
そんな匂いは、ここで人が死んだ訳でもないのだから気のせいに決まっているはずなのに、俺はそう考えずにはいられない。