一匹狼くん、拾いました。





……緋也って、何考えてるかわかんないんだよな。







言っている言葉のどれが本音でどれが嘘か全然分からない。






「旦那様、お食事が出来上がりました」




扉を開けて部屋に入ってきたメイドが機械的に言い放った。





「ミカの分も作ったの?」


緋也は振り向き、扉の前にいるメイドに強めの口調で語りかけた。



「はい。俊平様も一緒に、ダイニングまでいらしてください」



「……この家の主は僕だよ。いつも言ってるけど、親もいないのにわざわざそこで食べる必要は無いでしょ。僕は忙しいんだ。さっさとこの部屋にミカの分も一緒に持ってきて」






突き放すような言い方をして、緋也はメイドから目を逸らした。



「ですが、私はお父様から旦那様をしつけるように「うるさい!あいつはもう死んだんだよ!!!」




緋也の喉仏から絞り出されたのは、悲嘆にくれたかのような激情した声だった。







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