嘘つきピエロは息をしていない
翌日、金曜日の放課後。
漂ってくるのは、チョコレートの甘い香り。
これだけで空腹を絶妙に満たしてくれるとわかりきっているのに、目から入ってくる情報――高校生によって調理室で作られたとは思えない出来栄えのブラウニーにノックアウト寸前。
「え! これ……全部差し入れなの!?」
話し相手でなく、ブラウニーに語りかけてしまう私。
「拙者が演劇部に入ったことは周知の事実でござるからな。このあと演劇部に寄ると言ったら、各班の面々が少しずつ分けてくれたのでござるよ」
料理部の人たち、なんて優しいんだろう。
「竹千代くんが作ったのもあるでござるか?」
「もちろんでござる」
「す……すごーい!」
ひたすらに感動していると、安達先輩が真っ先にひょいと一欠片つまみ、パクリとたいらげた。
「うん、美味しい」
「ずるーい!」
続いて新見先輩も口に運ぶ。
「焦らなくても、人数分あるでござる」
「あー、俺のは」
いっちゃんがブラウニーを手に取ると私の口に放り込んでくる。
「きりにやる」