嘘つきピエロは息をしていない
「……っ」
――頭が、痛い。
「吉川?」
割れそうに、痛い。
誰かの声が、聞こえる。
『できません』
――誰……?
『育てる自信が、ありません』
「あ……う……」
――ワタシに
「俺の声が聞こえるか?」
「うわぁああ!!!」
ワタシに未来なんて変えられるわけないだろう。
「どけ!」
そんな私と変わらず一緒にいてくれたのは――
「きり。俺だよ」
――誰?
「一色斉」
イッシキイツキ?
「……いっちゃん?」
「そうだよ、きり」
いっちゃんの声で、真っ暗な空間から色づいた空間へと、呼び戻される。
「なに泣きそうな顔してる。いつもみたいに笑えって」
呆れ笑いするいっちゃんが、私を覗き込んでいる。
「いつも、みたい、に?」
「きりといえば天真爛漫。そうだろ?」
「…………」
「約束したじゃないか。忘れたなんて言わせないから」
「覚え、て……る」
私は吉川きり。
人一倍、前向きで。
芝居好きな、女の子に――あの日、生まれ変わった。