嘘つきピエロは息をしていない

「きりから笑顔を奪うな」
「なんですか、さっきの」
「お前に教える必要ない」
「吉川は、なにかに怯えていた」
「忘れろ」
「先輩は、なにか知っているんですね?」

 一色は俺の知らない吉川を知っている。

 そんなもの長年の付き合いがあれば当然だ。

 それでも。

 一色が大きな秘密を握っていると思えてならない。

「知っていたとしても。教える義理はない」
「教えてやれ斉」

 緊迫した空気を打ち破ったのは――

「というよりは。私にも聞かせてくれないか」

 誰も逆らうことができない女だった。
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