嘘つきピエロは息をしていない
「部長は、もう気づいているんじゃないですか」
「君の口から聞きたいんだ、斉」
ベンチにかけた部長が足を組む。
しばらく部長と無言で見つめ合ったあと、一色が口を開いた。
「初めて会ったときから、違和は感じていました」
――違和?
「あれは近所の児童館でクリスマス会が催されたときのことです。当時俺は小学一年生で。くじで無作為に割り当てられるプレゼント交換の相手が、その年引っ越してきたらしい子供でした」
一色が、吉川との出会いを語りだした。
それは信じがたいものだった。
「きりは、ひとつ下の学年だと思えないくらい身体が小さかった上に言葉も遅れていて。二、三歳は離れていると思ったのが本音です。
そして男の子と見間違えるくらいのショートカットで、ズボンを履いていました。
他人との触れ合いが極端に苦手な子でした。俺が前に立つと和子さんに隠れてビクビクしていて。小動物みたいで俺は可愛いなって思った。
笑顔なんて見せるような子じゃなかったんです。俺は、そんなきりに近づきたかった。きりの心に触れようとした」
「斉が吉川の面倒をよくみてきた話なら、吉川から聞いているよ」
部長が相づちを挟む。