嘘つきピエロは息をしていない

 *


「始まりがいつかなんて、わからない。きっと生まれたその日から、俺は母さんの支配下に置かれていたんだと思う」

 こんな俺だけは見せたくないと思っていたはずなのに。

 話してみると案外どうってことなかった。

 それよりも吉川のことが知りたかった。

 本当の吉川に、逢いたかった。

 そのためには俺の全部を知られてもいいと思った。

 吉川は一度も相槌を挟まなかった。

 頷きもしなかった。

 だけど俺から一秒たりとも目を逸らさなくて、それが吉川なりの精一杯なのだと、そう感じながら話し続けた。

 俺のいる世界の話を終えたとき。

 いいや、話している途中――吉川から、笑顔が消えてしまった。
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