嘘つきピエロは息をしていない
「ああ」
「……いいの?」
「他には?」
「えっ、そんなこと。いきなり言われても」
「いつもの勢いどうしたんだよ。俺のことストーキングして不良に絡まれたの覚えてるよな?」
「あれは……! エンジン120%くらいの、ワタシだから」
本当のワタシはすごく臆病だから。
こんな風に人のいる場所で、こんなにも輝いてる人たちといるような子じゃないから。
「なんでも言えよ」
「なんでも?」
ふと、周りの視線が気になった。
合宿のお誘いしなきゃだよね。
「あのね。夏休み中に合宿があるの。ナイキくんも参加してくれると嬉しい」
「ああ。わかった」
「ほんとに?」
「行くよ。約束する」
「あ、」
「ん?」
「……稽古のあと。二人で夏の思い出作りたいなぁ」
「…………」
「って、言えば。死ぬ気で来てくれるの?」
「おい保。吉川に余計なこと吹き込んだのお前だな……って、いねぇし」
いつの間にか部室から姿を消していた、保先生。
やっぱり先生は神出鬼没らしい。